新・青空レモン ~詩平線の彼方へ~

詩を書き綴ります(旧はてなダイアリー終了にて再始動)

スケッチブック

クリーニングに出していた制服も戻り

いよいよ元いたバイト先に返しに行った

 

入口にいた気さくな警備員さんに

開けてもらい中の職員へ制服を渡す

 

警備員さんに最後の挨拶をすると

「最近、見なかったけれどどうしたの?」

と聞かれ、退職したことを伝える

「他のとこに行くからかい?」

いや、まだ決まってないんですけど

人間関係で辞めましたと答えた

 

この街にしては晴れて暖かい気温だったので

港まで散歩し程よい傾斜で海へと続く

コンクリートとゴムの出っ張りに腰を下ろし

スケッチブックを開く

 

4Bの鉛筆と練けしを取り出し

描いていると

風に紙がめくれてしまう

 

今度来るときはクリップを持ってこよう

 

海と空と堤防

傾げた古い船や水面に浮かぶ漁船

遠くの街並み

巡視船

 

そういえば、前にもこの付近で絵を描いたな

 

人のいそうでいない穏やかな入り江となった泊地

 

描いては見たものの

しっくりこない

なんだか薄っぺらい何を描いたかというか

何を描きたいのか不明な絵になってしまった

 

多分、実物よりも自分の絵ばかりみていたせいかも

しれない

 

実物を見ていると

最初は見えていなかったものが

見えだしてくる

 

見えてくるというよりも

見捨てていたものが

眼に入ってくるのかもしれない

 

ひとしきり書いた後は

図書館に寄り

文章技術の本と

原田泰治の画集を見る

 

家についてから

再度、もう一つのバイト先に

制服を返す