新・青空レモン ~詩平線の彼方へ~

詩を書き綴ります(旧はてなダイアリー終了にて再始動)

物語

自刻表

その街には 時が無かったそれでも レールの向こうから 時々、時がやってきた無限に変わり続ける場所で 無限に狂い続ける時計には もはや正確な時間など無かった進化しているのか 退化しているのか 順番という概念すら 成立しなかったどこからが生で どこから…

台風と祭り

大きな目をした 台風が 南の海からやってくる祭りを見たいと やってくるけれども 雨風強すぎて 祭りは散々 店も閉め祭りを見れずに 過ぎて行く大きな目をした 台風は いつしか消えて 凪の海

2匹のネズミ

2匹のネズミがいた1匹は迷路の箱へ 1匹は迷路の無い箱へ迷路のネズミは試行錯誤し 長い時間をかけて 出口へたどり着いた迷路の無いはずの箱のネズミは 何故か出てこなかった箱の中を覗くと 中央に食いかけの饅頭があったその横で ネズミは息絶えていた

かなり前に とある小さな街のコンビニで キャラメルを買い そのオマケに小さな磁石がついてきた 捨てずにリュックのポケットに入れて 入れたことも忘れていた 数年後 リストラされた僕は そのリュックを背負い ショーウィンドウを見ながら 街をさ迷っていた …

スイカの中

スイカの中に 果てしない砂丘が広がっていた どこまでも乾いた砂 いつまでも晴れた空 太陽の無い快楽の足跡 熟したまま消えていった 残されたのは 一粒の黒い種

四次元チャック

顕微鏡で 自分の 手の甲を 見たら 小さな チャックが 付いていた 小さなピンセットで それをつまんで ジーっと 下げたら 中から 手の甲が出てきた そのまま 最後まで チャックを 下げたら つるんと もう一人の 自分が出てきた それは肉でも骨でもなく 服を着…

惑星オリオン

激しい戦いのあった 惑星オリオン 日々争いの中で 大砲の音を聞きながら 人々は今日を生きていた 争いという日常 憎しみが 更なる憎しみを生み 報復が 更なる報復を生んでいた 平和など知らない 少年兵達 美と呼べるものは 何一つ無かった 水は数世代前に涸…

チョコレート

昨日と 明日が ケンカしたの 明日は 昨日に チョコレートを 忘れてきたんだけれど 昨日は そのチョコレートを 全部食べてしまったからなんだって それ以来 明日と 昨日は ずーっと 会うこともなくなったんだって 今日は そんな 二人が 好きなんだって みんな…

玉子の中の電話

母さんが、玉子を生みました。 中から何か聞こえます。 電話の音です。 母さんは、不思議に思い、殻をつついてみました。 その音は止まりました。 もう一度、その玉子に耳を澄ませてみましたが、 静かです。 21日くらいたって、孵化しました。 玉子の中から…

雨と虹

大きな大きな母さん雲が言ったの。 「私がいるうちは、雨は止みませんよ」って。 小さな小さな子ども雲がそれを聞いてこう言ったの。 「雨より、虹がみたいな」って。 すると 「虹は誰が作るの?」って、 小鳥が聞いたの。 それを聞いて お天道様が こう言っ…

手のひらのお爺さん

ある日手のひらを 広げたら 白髭のお爺さんが 生命線の真ん中に 腰掛けていたの お爺さんは 腰を曲げて 何かを探していたの 何をお探しですか? って尋ねたら 「あんたの本音」 って答えたの 気になって、自分も、 その「本音」を探したの 隠す場所が 無いの…