新・青空レモン ~詩平線の彼方へ~

詩を書き綴ります(旧はてなダイアリー終了にて再始動)

四次元チャック

aozoraremon2006-12-12

 
顕微鏡で
自分の
手の甲を
見たら
小さな
チャックが
付いていた
 
小さなピンセットで
それをつまんで
ジーっと
下げたら
中から
手の甲が出てきた
 
そのまま
最後まで
チャックを
下げたら
つるんと
もう一人の
自分が出てきた
 
それは肉でも骨でもなく
服を着た
いつもの自分だった
 
その手の甲を
顕微鏡で見たら
また同じところに
同じチャックが付いていた
 
何枚も何枚も
自分をめくっていった
 
何人も何人も
自分が出てきた
そして
自分を主張し始めた
 
それぞれ
違うことを
主張していたが
どれも
心当たりのある
自分のつぶやき
そのものだった
 
一人一人
その話を聞くと
話し終わった
瞬間
しぼみ始め
跡形もなく
消えていった
 
満杯の部屋も
いつしか
自分一人だけになった
 
また
顕微鏡で
手の甲を見ると
もう
どこにも
そのチャックは
無かった