朝
9月の風が
2階の窓から
すうっと刺し込んできた
ギラついていた空が
化粧を落としてゆく
寮へ戻る休憩時間
黄色い蝶の大群
秋
夏休みもとらず
帰省もせず
過ぎていった
それでも
寂しくないという
幸せだけを残して
僕には
音楽がある
詩がある
絵がある
本がある
前世は悲惨だったらしいけれど
今は自由を感じている
休日には
やりたいことがやれる
自分で選んだ職業で
働ける嬉しさがある
金持ちじゃないけれど
毎日の生活には
困ってはいない
全ては有り難いこと
日々の老人たち
施設での生活
喜怒哀楽
毎日がドラマ
ばあちゃんも
体調が戻って
食堂で食べられるようになった
裸足をつっこんだ
サンダル
ひんやりした
9月の風
誰もいなくなった
食堂の窓を閉めた