新・青空レモン ~詩平線の彼方へ~

詩を書き綴ります(旧はてなダイアリー終了にて再始動)

宇宙で一番のピント

 
思えば 
割れた鏡たち 
 
割れたまま買い換えようせず
久しく時が過ぎていた
 
自分なんて
見なくてもいい
 
そんな自分すら
自覚できないまま
 
思えば
20歳になるかならないか
就職して始めて住んだ寮
  
それは30年も前に建てられた
古びれた元看護婦寮
 
玄関のひさしの上には
草が生えていた
 
16室程の部屋に住んでいたのは
自分も含めて男4人
 
介護福祉制度が出来るまで
男性職員は圧倒的に少なく
その頃その施設にとっては
初の男性介護員となった
 
よほど嬉しかったのか
面接の時は施設長がカツ丼をご馳走してくれて
係長は、同期の仲間たちを家に招待してくれた
先輩達には、「そんなにフレンドリーな人じゃないんだよ
よっぽど嬉しかったんだろうね」と話してくれた
 
自分の部屋は
長い廊下の一番奥
 
今も昔も
選ぶと選ばざるとに関わらず
住んだところは
隅っこが多い
 
よっぽど
人間嫌いなのだろうか 
 
かび臭い
4人部屋に
ひとり
 
押し入れからは
看護婦長と書かれたプレートが1枚
国民健康なんたらと印字された木製の温度計が1本
四角い鏡が1つ

その鏡もここに移り住んだ頃に
その寿命を終えた
割れるという形をとって
 
一つ一つ手持ちの鏡が割れて
一つ一つ自分を見なくなっていた
 
鏡――
 
漠然と思っていたけれど
今日決めた
本年度の目標
 
「自分を愛する」
 
プロジェクトゴール:自愛(=完全肯定=全宇宙愛=信頼)
プロジェクトチーム:自分
プロジェクトネーム:自愛プロジェクト
プロジェクトアプローチ:鏡倍増計画、自愛の言葉・祈り→日常への溶かし込み 
コードネーム:M

本日そのマストアイテムが
3つ届いた
 
額のある壁掛け鏡
アンティークな置き鏡
4面どこでもミラー
 
自己の完全肯定
自己の完全信頼
自己の完全許し
自己の完全癒し
自己の完全覚醒
 
これまでも
これからも
自分に気づき続けること
 
宇宙で一番避けていたものに
宇宙で一番のピントを合わせる
 
愛しているよ
 
ずっと
ずっと
ずっと