新・青空レモン ~詩平線の彼方へ~

詩を書き綴ります(旧はてなダイアリー終了にて再始動)

母のような男

aozoraremon2007-03-05

 
高校時代まで
自分用の部屋が
二つあった
といっても
完全に自分の
独立空間ではないが
 
一階は学習用
二階は寝室用
 
一階の部屋は
妹のエレクトーンが
置いてあり
使わなくなってからは
自分用の遊び道具に
なっていた
 
二階の部屋は
寝室なのだが
母の仕事場でもあり
和服を縫うミシンの音を
聞きながら寝ていた
 
仮止めのマチ針が
よく絨毯の上に
落ちていたが
体に刺さった事は
一度も無かった
 
幼少時から
不安症で
皆が集まって
楽しそうであればあるほど
失われる恐怖と無常観に
さいなまれていた
 
悪夢もよくみた
家族が一人ずつ死んでしまう夢
目覚めたら一人だけ無人のアパートに
いたという夢
 
夜には 
不眠と金縛り
おまけにひどいアトピー
体の間接部分が痒く傷だらけだった
 
幸いな事に
母は優しく
「どうしよう どうしよう」
の口癖の私に
「世の中なんとかなるもんだ」
「案ずるより生むが安し」
「大丈夫」
と、いつも励ましてくれた
 
小・中学生の頃
作文で「母のような男になりたい」と
書いた
 
介護福祉士になった時
父がその事を思い出し
「そのとおりになったんだなぁ」
と、ビールを飲みながら
静かに笑っていた
 
母のような

 
不安を希望に
苦しみを癒しに
自分で
自分を
励ます
言葉の力
 
それは
母から頂いた
最大の道標
 
母のような男に
なれるか
 
母のように
愛せるか
 
自分を