今年も
川へ帰ってきた
彼ら
もしかしたら
いつか見た
川底のイクラ
どんぐりと見るか
カシの木と見るか
イクラと見るか
鮭と見るか
バシャバシャと
音を立てて
近寄る自分に
反応している
彼
さんざんカラスに
突かれて
目から赤い血を流し
虚空を見つめている
彼
目玉をくりぬかれ
白く干せてゆく
彼
一面に横たわる
彼、彼、彼
よく頑張った
よく帰って来てくれた
胸が熱くなる
鮭は鮭の摂理として
カラスはカラスの摂理として
私は私の摂理として
命がけで生きている
彼らの生き様に
恥じる生き方を
してはいないか
一切の言い訳も
誰のせいにもしないで
ただ真っ直ぐに
帰って来た者たちの
名もなき墓場
もう
彼らを見るのは
この地で
今年が最後
彼らの
死にざまを
胸に刻んで
今を生きろ
私よ