新・青空レモン ~詩平線の彼方へ~

詩を書き綴ります(旧はてなダイアリー終了にて再始動)

 鮭

aozoraremon2016-09-27


今年も
川へ帰ってきた
彼ら

もしかしたら
いつか見た
川底のイクラ

どんぐりと見るか
カシの木と見るか

イクラと見るか
鮭と見るか

バシャバシャと
音を立てて
近寄る自分に
反応している

さんざんカラスに
突かれて

目から赤い血を流し
虚空を見つめている

目玉をくりぬかれ
白く干せてゆく

一面に横たわる
彼、彼、彼

よく頑張った
よく帰って来てくれた

胸が熱くなる

鮭は鮭の摂理として
カラスはカラスの摂理として
私は私の摂理として

命がけで生きている

彼らの生き様に
恥じる生き方を
してはいないか

一切の言い訳も
誰のせいにもしないで
ただ真っ直ぐに
帰って来た者たちの
名もなき墓場

もう
彼らを見るのは
この地で
今年が最後

彼らの
死にざまを
胸に刻んで

今を生きろ

私よ