新・青空レモン ~詩平線の彼方へ~

詩を書き綴ります(旧はてなダイアリー終了にて再始動)

Sおじいちゃん

 
浜辺に
転がっていた
白い
流木
 
何年も
何年も
時は
過ぎて
 
かつて
葉を青々と
茂らせたであろう
その枝も
今は
白骨のように
 
昨日は
深夜に
一人のおじいちゃんが
施設で亡くなった
 
不随意の
体動が激しくて
いつも
車椅子の後ろに
椅子を置いて
倒れないように
していた
 
先昨日は
吐気がいつもよりひどく
夕食後から
食べたものを
間欠的に吐いていた
 
医師も看護婦も
遅くまで見守っていた
 
あの
いつもの
テーブル席には
もう
おじいちゃんは
いない
 
真っ暗な
食堂の席に
いないはずの
誰かが座っている
 
よくみると
深夜徘徊する
いつもの
おばあちゃんだった
 
新しい
利用者が
もうすぐ
入所されるという
 
生活の場であり
駅であり
ここは
老健であり
学び屋
 
おじいちゃんに
私は
何が出来たであろうか
 
背中をさすりながら
青くなっていた
その顔と手を
見てた
 
あの夜
私が
帰った後
おじいちゃんは
旅立たれた
 
トイレには
不随意運動による
頭を保護する為に
スポンジが取り付けられていた
 
おじいちゃんの
短い毛髪だけが
 
そこに
残っていた