浜辺に
転がっていた
白い
流木
何年も
何年も
時は
過ぎて
かつて
葉を青々と
茂らせたであろう
その枝も
今は
白骨のように
昨日は
深夜に
一人のおじいちゃんが
施設で亡くなった
不随意の
体動が激しくて
いつも
車椅子の後ろに
椅子を置いて
倒れないように
していた
先昨日は
吐気がいつもよりひどく
夕食後から
食べたものを
間欠的に吐いていた
医師も看護婦も
遅くまで見守っていた
あの
いつもの
テーブル席には
もう
おじいちゃんは
いない
真っ暗な
食堂の席に
いないはずの
誰かが座っている
よくみると
深夜徘徊する
いつもの
おばあちゃんだった
新しい
利用者が
もうすぐ
入所されるという
生活の場であり
駅であり
ここは
老健であり
学び屋
おじいちゃんに
私は
何が出来たであろうか
背中をさすりながら
青くなっていた
その顔と手を
見てた
あの夜
私が
帰った後
おじいちゃんは
旅立たれた
トイレには
不随意運動による
頭を保護する為に
スポンジが取り付けられていた
おじいちゃんの
短い毛髪だけが
そこに
残っていた